2016年、OpenAIが初めてGPU上で大規模ニューラルネットワークを訓練した時、NVIDIAはおそらく自分たちがパンドラの箱を開けようとしていることに気づいていなかっただろう。それから10年後の現在、このチップ大手は世界で最も時価総額の高い企業の一つとなり、その時価総額はかつて4兆ドルを突破した。しかし本稿の著者Russell Brandomが指摘するように、NVIDIAは今や自らが創り出した算力市場の「被害者」となっている——この市場の価値が完全に証明されたことで、あらゆる企業が参入しようとしており、NVIDIAは業界全体と戦わざるを得ない状況に置かれているのだ。
礎を築いた者が標的となるまで
NVIDIAの台頭はAI革命とほぼ同期していた。2012年にAlexNetがImageNetコンペティションでNVIDIAのGPUを使い一躍有名になり、2016年にはAlphaGoが李世乭を破った裏側にもNVIDIAの算力があった。2022年にはChatGPTが世界を席巻し、その訓練に使われた数万枚規模のクラスターにはNVIDIAのH100が詰め込まれていた。NVIDIAなくして今日の生成AIは存在しなかったと言っても過言ではない。
しかしこの成功は、ある種の逆作用をも招いた。テクノロジー業界全体が算力をAI時代の石油と認識した時、NVIDIAは唯一の製油所となった。だが問題は、製油所が一つしかないにもかかわらず、誰もが自前の製油所を持ちたがっているという点だ。Microsoft、Amazon、Google、Metaといった、かつてNVIDIAの最大顧客だった企業が、今では数十億ドルを投じて独自のAIチップを開発している。公開報道によれば、GoogleのTPUはすでに第6世代に達し、AmazonのTrainiumとInferentiaは社内で大規模展開されており、Microsoftも2024年に独自開発のAIアクセラレーターMaia 100を発表した。
「NVIDIAは算力がいかに価値を持ち得るかを証明したが、今や自分たちがあらゆる企業の参入を招く市場の中心にいることに気づいている——そして、より単純な技術とよりつまらない企業が、その周縁でしっかりと利益を上げているのだ。」——Russell Brandom
「シンプルな技術」が漁夫の利を得る仕組み
引用中の「より単純な技術とよりつまらない企業」は貶める表現ではなく、特定の細分化市場に集中し、NVIDIAの全面的優位に挑もうとしない企業を指している。例えば、AMDはMI300シリーズでAI推論市場に足がかりを見つけた。IntelはGaudiアクセラレーターでコスト重視の顧客を取り込んだ。そしてGroqという企業は、超低遅延のLPU(言語処理ユニット)でリアルタイム推論分野に頭角を現した。これらの企業の技術路線は比較的シンプルで、対象市場も狭い。しかしNVIDIAと訓練分野で正面から競わないからこそ、素早く収益化できているのだ。
さらに典型的な例がクラウドサービス事業者の自社開発チップだ。AmazonのTrainiumチップは社内ワークロード向けに最適化されており、NVIDIAのように各種フレームワークやライブラリとの互換性を持たせる必要がなく、開発コストが低く、反復も速い。アナリストの推計によれば、自社開発チップによってクラウド大手はハードウェアコストの30〜40%を節約でき、NVIDIAの供給サイクルや価格戦略に縛られることもなくなる。NVIDIAのCUDAエコシステムはかつて最強の堀だったが、今では多くの開発者がPyTorchの抽象化レイヤーやOpenAIのTritonなどのツールを通じて、他のハードウェアプラットフォームへ容易に移行できるようになっている。
編集者注:堀は浅くなりつつあるが、NVIDIAにはまだ手札がある
NVIDIAを「被害者」と表現するのは、やや誇張が含まれている。時価総額4兆ドルを超える企業として、「被害を受けている」段階には程遠い。しかしこの視点は、NVIDIAが直面する深層的な苦境を的確に突いている——すべての顧客が競合他社になった時、独占的地位が持続できないのは必然だ。NVIDIAの対応戦略は、算力の参入障壁をひたすら高め続けることだ。H100からB200、さらに2026年に発表予定のRubinアーキテクチャへと、各世代の製品で性能面において競合を2世代以上引き離そうとしている。同時に、NVLink、InfiniBandなどのインターコネクト技術によってクラスター優位性を強化し、顧客が他社チップで同等の効率のシステムを構築しにくくしている。
しかし市場のNVIDIAへの期待は楽観的すぎる可能性がある。2024年、NVIDIAのデータセンター事業収益は前年比200%以上増加したが、成長速度は鈍化しつつある。クラウド事業者の自社開発チップ展開比率は2027年までに30%を超えると予測されており、AMDとIntelも推論市場を侵食しつつある。NVIDIAがもはや唯一の選択肢でなくなりつつあること——これこそが、最も警戒すべき「逆襲」のシグナルかもしれない。
2016年に戻って考えてみよう。今日の結末を知っていたとしても、NVIDIAは全力でGPUコンピューティングを推進しただろうか?答えはイエスだ。算力の価値を証明することによってのみ、NVIDIAは今日のNVIDIAになれたのだから。そして次なる課題は、誰もが分け前を求める市場の中で、いかにして先頭を走り続けるかだ。この算力戦争の後半戦は、まだ始まったばかりである。
本稿はTechCrunchより編訳
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