OpenAIとAnthropicが中国製オープンソースモデル規制をワシントンに働きかけか――25社が連名公開書簡で反撃

2026年7月下旬、ニューヨーク・タイムズは5人の関係者の証言を引用し、OpenAIとAnthropicがそれぞれ米財務長官スコット・ベッセントおよびホワイトハウス技術顧問マイケル・クラジオスに対し、中国製オープンソース重みモデルの普及・利用を規制するよう非公式に働きかけていたと報じた。

「オープンソース重みモデル」とは、モデルのパラメータ重みを公開し、誰でもローカルに展開・改変できるAIシステムを指す。現在この分類にはMetaのLLaMAシリーズ、中国のDeepSeek、ZhipuのGLMなどが含まれる。OpenAIとAnthropicが規制当局に訴えた核心的な主張は、中国のAI企業が「蒸留(ディスティレーション)」技術を用いて米国のトップシステムから知識を抽出し、無償の競合製品をリリースしており、技術能力と国家安全保障の両面で脅威をなしているというものだ。両社はトランプ政権に対し、こうしたモデルへのアクセスにより厳格な制限を設けるよう求めた。

公開声明と非公式ロビー活動の間に生じた亀裂

OpenAIはかつてオープンソース重みAIを支持する公開書簡に署名しながら、ほぼ同時期にワシントンでオープンソースモデルの規制を非公式に働きかけていた。Anthropicはその公開書簡への署名を見送った。両社のビジネスモデルは酷似しており、コア収益はいずれもクローズドソースモデルのAPIアクセス料金に依存している。批評家は、国家安全保障の論理と商業的利益を結びつけた点こそが、今回のロビー活動に対する最大の疑念だと指摘する。中国製オープンソースモデルが規制されれば、APIアクセス料金を徴収するクローズドソースモデルのプロバイダーが最も直接的な恩恵を受けるからだ。

Anthropicはこれまでの公式声明で一貫して、オープンソースモデルが「危険な能力の拡散の敷居を下げる恐れがある」と強調してきた。OpenAIも公開の場で、政府主導のAI安全評価制度の構築と一部の先進モデルへの強制的な安全テストの実施を求めてきた。これらの主張はそれ自体、安全保障の文脈で一定の説得力を持つが、非公式なロビー活動と並行して浮上することで、内在する商業的動機を安全保障への懸念から切り離すことが難しくなっている。

25社の公開書簡――業界による異例の集団的意思表明

ロビー活動の報道が広まるのとほぼ同じ頃、反対勢力も素早く結集した。2026年7月24日、NVIDIA、Microsoft、Meta、Mistral、Palantir、IBM、Andreessen Horowitz、Hugging Face、Mozilla、Linux Foundationなど25社・団体が連名で公開書簡『オープンソース重みと米国のAIリーダーシップ』を発表し、オープンソース重みモデルへの規制に明確に反対した。その前日には、200社近くのAIスタートアップが同じ立場の連名請願書をホワイトハウスに提出していた。

書簡の核心的な論点は、オープンソースシステムはむしろAIの安全性に資するというものだ。重みを公開することで、より広範なベンチマーク評価、安全性の検証、脆弱性の発見が可能になる。一方でオープンソースの規制は「AI主導権をクローズドAPIを握る一握りの巨大企業に明け渡すことに等しい」と主張する。NVIDIAのCEOジェンスン・フアンは「世界にはクローズドソースモデルもオープンソースモデルも必要だ」と投稿し、MicrosoftのCEOサティア・ナデラも続いて、オープンソースソフトウェアは健全なAIエコシステムにとって不可欠だと表明した。

この公開書簡への署名陣容は、それぞれの利害構造を如実に反映している。NVIDIAはチップを販売しており、オープンソースモデルの普及はGPU消費の直接的な拡大につながる。MetaはオープンソースをエコシステムのコアとなttFailed戦略の要に据えている。Hugging Faceのビジネスモデルはオープンソースコミュニティの上に成り立っている。オープンソースへの支持が自社の商業的利益と無関係だとは、彼らについても言えない。

開発者と企業ユーザーが直面する現実的な選択

一般の開発者にとって、この政策をめぐる攻防の結果は、いずれの当事者の公式声明よりもはるかに直接的な影響を持ちうる。米国政府が特定の中国製オープンソースモデルへのアクセス制限を最終的に選択した場合、最初に打撃を受けるのは、DeepSeekやGLMなどのモデルをローカル展開に活用している企業ユーザー、とりわけプライバシー保護、コスト削減、またはコンプライアンス上の理由からオフライン運用を選んでいるチームだ。

米国当局は現在、中国製オープンソースモデルを全面禁止ではなく、国家安全保障上の個別案件として、ケースバイケースで審査する方針を取っている。この折衷的なアプローチが意味するのは、短期的に「一律禁止」の可能性は低いものの、特定のモデルがいつでも輸出規制やアクセス制限リストに追加されうるということだ。中国製オープンソースモデルを製品構築の基盤としている企業は、技術選定の核心的考慮事項としてアーキテクチャの柔軟性を確保すべきだ。単一モデルへの依存よりも、複数モデルへの対応設計のほうがリスクははるかに低い。

構造的矛盾――安全保障の論理は政策の正当性を支えられるか

OpenAIとAnthropicが援用する「蒸留の悪用」という論拠は、実際に存在する技術的現象を指している。小規模モデルが大規模モデルの出力を模倣することで能力を蒸留する手法は、近年オープンソースコミュニティで広く用いられているトレーニング手法だ。この手法が知的財産権上の論争を引き起こしているのは事実だが、「国家安全保障上の脅威」という位置付けについては、現時点で公開された政府の評価報告書による裏付けが存在しない。

より根本的な構造的矛盾は次の点にある。「安全リスク」がオープンソースを規制する正当な理由であるならば、その論理はいかなる国の高性能オープンソースモデルにも等しく適用されるべきであり、中国産に限定されるべきではない。選択的に適用される安全保障の論拠は、国際社会と技術コミュニティの双方からダブルスタンダードとの批判を免れない。これこそが、今回のロビー活動がシリコンバレー内部で最も強い反発を招いた根本的な理由だ。

今後最も起こりやすいシナリオ

米国政府が最も取りやすい道筋は、特定の高性能中国製オープンソースモデルを既存の輸出規制の枠組みに組み込んでケースバイケースで審査することであり、新たな「オープンソース禁止令」を立法で創設することではない。このアプローチは政治的抵抗が最も少なく、行政府にとって最大限の裁量余地を確保できる。

この判断が妥当かどうかを見極めるには、二つのシグナルに注目すべきだ。第一に、商務省産業安全保障局(BIS)が新たな中国製AIモデルをエンティティリストに追加するかどうか。第二に、ホワイトハウスがオープンソース重みモデルを対象とした大統領令または覚書を発令するかどうか。今後3〜6カ月以内にこうした動きがなければ、ロビー活動の効果は限定的であり、政府は現状維持を志向していると見てよいだろう。

Anthropicにとって、この一連の騒動がもたらすブランドへの打撃は、短期的な政策上の利益を上回る可能性がある。「AI安全」はAnthropicのコアブランド・ナラティブであり続けてきたが、競合他社を規制するための非公式なロビー活動は、そのナラティブの信頼性を侵食しつつある。公開の立場と非公式なロビー活動の間に整合性を取り戻すことは、Anthropicが当面の間向き合わなければならない広報と戦略の二重課題となるだろう。