Cisco、約4,000人を削減 AIへ全力投資で四半期売上高が過去最高に

米国東部時間2026年5月14日、ネットワーク機器大手Cisco Systems(シスコシステムズ)は全世界で約4,000人の人員削減を実施すると発表した。これは同社の従業員総数の約5%にあたる。このニュースは、Ciscoが同日発表した2026会計年度第3四半期決算で明らかになった。注目すべきは、これがCiscoが近年連続して実施している複数回の人員削減の一つであるという点だ。2022年11月に約4,000人を削減し、2024年2月にも約4,000人を削減している。頻繁な組織再編の背後には、この伝統的なネットワークハードウェア大手が人工知能の波の中で苦しい転換を迫られている実情がある。

「過去最高の売上」と人員削減の並行

CiscoのCEOであるチャック・ロビンス(Chuck Robbins)氏は、決算電話会議で第3四半期に「過去最高の四半期売上高」を達成したと述べたが、具体的な数字は明らかにしなかった。アナリストの予測によれば、同四半期の売上高は140億ドルを超え、前年同期比約8%増となる可能性がある。しかし、輝かしい数字の裏側で、Ciscoは同時に新たな人員削減を発表した。ロビンス氏は、人員削減は「リソース配分を継続的に最適化する」ために必要な措置であり、節約されたコストは主にAIネットワーク、セキュリティ、AIベースのネットワーク自動化製品など、人工知能関連分野への投資に充てられると説明した。

「我々は資本と人材を最も成長性の高い分野、特に人工知能へ再配分している。これは縮小ではなく、戦略的な再フォーカスである。」——チャック・ロビンス、Cisco CEO

編者注: Ciscoの「人員削減+AI投資」モデルは唯一のケースではない。2023年から2025年にかけて、Intel、Dell、Hewlett Packard Enterpriseなど従来のハードウェア大手も同様の戦略を採用している。この現象は、AI経済が伝統的なテック企業に対して深い再構築を迫っていることを反映している。NVIDIAがAIチップによって時価総額4兆ドルを突破する中、ネットワーク機器メーカーは「パイプ」を売るビジネスから「インテリジェンス」を売るビジネスへの転換を迫られている。Ciscoが2024年に発表した「Cisco AI Assistant」シリーズ製品(ネットワーク設定と障害対応用途)は、この方向性をある程度実証している。

人工知能が引き起こすインフラ軍拡競争

Ciscoの人員削減の決定は、AI投資計画と密接に関連している。大規模モデルの訓練と推論の需要が爆発的に増加する中、データセンターネットワークは「従来のイーサネット」から「超大規模AIクラスタネットワーク」へのアップグレードを経験している。Ciscoは2025年にAIワークロード専用に設計された新型「Cisco Silicon One AI」チップを発表し、NVIDIAやAMDなどのGPUメーカーと深く統合している。しかし、この分野の競争は極めて激しい。Arista NetworksはAIデータセンタースイッチ市場で先行しており、HuaweiやH3CもアジアA市場で急速に追い上げている。

今回のCiscoの人員削減は、主に営業、管理、および一部の非中核製品ラインのエンジニアチームを対象としている。社内メモによれば、ネットワーク機器保守部門も統合と簡素化が行われる。一方、データセンターネットワーク、AIセキュリティ、クラウド管理プラットフォーム(Cisco Catalyst Centerなど)の部門の採用枠はむしろ増加している。

財務状況:増収とコスト削減のバランス

Ciscoはプレスリリースで具体的な四半期売上高を公表していないが、これまでのアナリスト予測(2026会計年度通期の売上高は570億ドルを突破する見込み)を参照すると、第3四半期の「過去最高」のパフォーマンスはAI関連受注の急増によるものと推測される。Ciscoが2025年に発表した「AIネットワーキング・アズ・ア・サービス」(AI Networking as a Service)サブスクリプションモデルも経常収益に貢献している。ただし、技術開発やチップ試作費用の高騰により運営コストは上昇しており、純利益率は圧迫されている。人員削減は短期的に利益率を改善する有効な手段であり、推定によれば今回の削減でCiscoは年間約6〜8億ドルの人件費を節約できる。

テック業界の人員削減の波におけるAIロジック

2026年以降、テック業界では既に12万人以上の人員削減計画が発表されており、その大多数は伝統的なITハードウェア、コンシューマエレクトロニクス、エンタープライズソフトウェア分野に関わるものだ。これと対照的に、AIスタートアップや大型AIプラットフォーム(OpenAIやAnthropicなど)は大量採用を続けている。Ciscoの行動は、再び厳しい現実を示している。古い職と新しい職の創出は一対一の関係にはなく、解雇された営業担当者がAIアルゴリズムエンジニアに直接転身することは難しい。業界アナリストは、CiscoはSplunkを280億ドルで買収しセキュリティ分析能力を強化した2024年の事例のように、節約した資金をAIスタートアップの買収に活用する必要があると指摘する。

編者注: 注目すべきは、Ciscoが決算で「record quarterly revenue(過去最高の四半期売上高)」と述べる一方で、AIインフラ投資がまだ完全に利益に転化していないことも認めている点だ。これは現在のAIブームにおける典型的な矛盾を反映している。企業はAI時代の切符を奪うためにあらゆる代価を払うが、投資回収サイクルは数年に及ぶ可能性がある。Ciscoの「過去最高」の売上の中で、持続可能なAI事業から来ているものがどれほどあるかは、まだ時間をかけて検証する必要がある。

結語:転換の痛みと機会

Ciscoの人員削減の決定は悲観的なシグナルではなく、技術パラダイムの転換に直面した伝統的テック大手にとっての必然的な選択である。インターネットのバックボーンネットワークが「コンピュータの接続」から「AIコンピューティングクラスタの接続」へと進化する中、Ciscoは自身を再構築せざるを得ない。投資家にとっては、Ciscoがネットワーク機器の基盤を維持しつつ、AIネットワーク分野でかつてのルーターやスイッチ市場での支配的地位を再現できるかが、今後10年の運命を決定づけることになるだろう。

本記事はTechCrunchから翻訳・編集したものである。