AMDがHelios AIラックシステムを発表、NVIDIAに正面挑戦

AMDがHelios AIラックシステムを発表、NVIDIAに正面挑戦

AMDはチップ競合他社であるNVIDIAに挑戦すべく、新たなHelios AIラックスケールシステムを発表した。同システムは今年後半から顧客への出荷が開始される予定だ。Heliosシステムは大規模なAIトレーニングと推論タスク向けに設計されており、モジュラーアーキテクチャを採用し、AMDの最新InstinctアクセラレーターとInfinity Fabric相互接続技術を統合している。NVIDIAのDGXシリーズなどのラックソリューションと直接競合することを目指している。

Heliosシステムの主要ハイライト

AMD公式の発表によると、Heliosシステムは数千GPUにおよぶクラスター規模の拡張をサポートし、高速相互接続による低遅延データ転送を実現する。主要コンポーネントには、CDNA 4アーキテクチャベースのInstinct MI400シリーズアクセラレーター、および新世代のInfinity Fabric 5.0相互接続技術が含まれており、チャンネルあたり200GB/sの帯域幅を提供する。システムにはAMD EPYCプロセッサーが制御ノードとして統合されており、HBM3e高帯域幅メモリもサポートする。

「HeliosはAIインフラ分野におけるAMDの最も野心的な製品です。単なるGPUサーバーではなく、顧客が大規模AIクラスターを単一コンピューターのように展開・管理できるよう設計された、完全なエンドツーエンドシステムです。」——AMDコンピューティング&グラフィックス事業部上級副社長デビッド・ワン(David Wang)がメディアブリーフィングにて発言。

NVIDIAのDGX H100/B200システムと比較して、Heliosはオープン性において優位性を持つ。OCP(オープン・コンピュート・プロジェクト)標準をサポートしており、顧客は異なるベンダーのスイッチ、ストレージ、ネットワーク機器を選択できる。また、AMDはROCmソフトウェアスタックの成熟度を強調しており、現在PyTorch、TensorFlow、そして最新のLlama、Mixtralなどのオープンソース大規模モデルを含む200以上の主要AIフレームワークおよびモデルをサポートしている。

業界背景:AIラック市場の競争構図

NVIDIAは長期にわたりAIトレーニング市場を支配しており、そのDGXシリーズとHGXバスボードソリューションは事実上の業界標準となっている。しかし、AIモデルの規模が拡大し続ける中(GPT-4は1兆パラメーターを超えると言われる)、単一ノードの性能向上が物理的限界に近づきつつあり、ラックスケールシステムが新たな競争の焦点となっている。AMDの今回の参入は、ハードウェア性能面での競争をもたらすだけでなく、オープンなエコシステムを通じて顧客の特定ベンダーへの依存を低減しようとする試みでもある。

アナリストは、AMDの課題はソフトウェアエコシステムにあると指摘する。ROCmは近年大きく進歩しているものの、NVIDIAのCUDAが持つ膨大なユーザーベースと成熟したツールチェーンとの差はまだ残っている。Heliosシステムの成否は、AMDが大手クラウドベンダーや企業顧客を自社プラットフォームへ移行させられるかどうかにかかっている。

編集者注:AMDの逆転の機会

技術スペックの観点からは、Heliosシステムの理論演算性能と相互接続帯域幅はすでにNVIDIAの同等製品に引けを取らない。AMDが2026年下半期の出荷を選んだのは、NVIDIAの次世代Blackwellアーキテクチャの量産前の窓を狙ったものだ。AMDが予定通りに出荷し安定性を確保できれば、一部のハイエンドAIトレーニングシナリオでシェアを獲得できる可能性がある。

しかし、NVIDIAも手をこまねいているわけではない。より新しいラックレベルのソリューションの投入を加速させ、さらなる値下げやソフトウェアサービスのバンドルに踏み切る可能性もある。この「ラック戦争」は、今後2年間のAIインフラのコスト構造と技術的方向性に深く影響を与えるだろう。

本記事はTechCrunchより編訳。