AmazonのAIチップはNVIDIAを狙う?AWSが自社開発チップの外部販売を計画

AmazonのAIチップはNVIDIAを狙う?AWSが自社開発チップの外部販売を計画

6月19日、TechCrunchの独占報道によると、Amazon Web Services(AWS)は複数のデータセンター運営事業者と交渉を進めており、自社開発のAIチップ(TrainiumおよびInferentiaシリーズを含む)をAWSクラウドプラットフォーム内での利用に留まらず、第三者データセンターへ直接販売する計画であることが分かった。この戦略転換は、AmazonがAIチップ分野においてNVIDIAに対してより直接的な挑戦を仕掛けることを示している。

内部最適化から外部収益化へ

長らく、AWSの自社開発チップは主にクラウドコンピューティング事業に活用され、Intel・AMD・NVIDIAへの依存度を下げるとともに、特定のワークロードに向けた性能最適化を図ってきた。TrainiumとInferentiaはそれぞれAIトレーニングと推論シナリオを対象としており、AWSの社内で広く活用されている。しかし、AIコンピューティング需要の爆発的な成長に伴い、Amazonはこれらのチップが持つ外部商業価値が内部利用をはるかに上回る可能性があると認識するようになった。

AmazonのCEOアンディ・ジャシー(Andy Jassy)氏は最近の社内会議で「私たちは約500億ドルの市場機会を見出している。他のデータセンターへのAIチップ販売を通じて、AWSはクラウドサービスを提供するだけでなく、チップの基盤レベルから競争に参加できる」と述べた。事情に詳しい関係者によると、ジャシー氏はすでにAWSのハードウェアエンジニアリングチームに対し、チップの標準化と外部適応作業の加速を指示しているという。

500億ドルの機会が意味するもの

現在のAIチップ市場はNVIDIAが支配しており、同社のGPU(H100、B200など)は強力なCUDAエコシステムと極めて高い性能によって市場シェアの80%以上を占めている。NVIDIAの時価総額もこれにより30兆円を超えた。Amazonの参入は、もともとクラウドサービス事業者間の競争であったものが、チップハードウェアの領域にまで拡大することを意味する。

アナリストは、500億ドルという数字は根拠のないものではないと指摘する。市場調査機関の予測によれば、2027年までにグローバルAIチップ市場規模は4,000億ドルを超え、そのうちデータセンター向けAIチップが60%以上を占める見通しだ。AWSが10〜15%のシェアを獲得できれば、500億ドル規模の収益を実現できる可能性は十分にある。しかし課題も大きく、NVIDIAのCUDAソフトウェアエコシステムの参入障壁は極めて高く、顧客の移行コストも膨大だ。

Amazonの自信の源:垂直統合とカスタマイズの優位性

Amazonはチップ分野の新参者ではない。2015年にはAWSがイスラエルのチップ企業Annapurna Labsを買収し、その後ネットワークチップ、ストレージチップ、AIチップを相次いで投入してきた。Trainium2チップは性能電力比においてNVIDIAの同等製品に近い水準に達しており、Amazonのレコメンデーションシステムや音声アシスタントといった一般的なシナリオに対して深く最適化されている。

注目すべき点として、AWSは汎用AIチップでNVIDIAと全面的に競合しようとしているのではなく、超大規模データセンターや特定業界の顧客に特化しようとしている。例えば、大規模言語モデル(LLM)の推論に対してより低コストなソリューションを提供する方針だ。社内テストによれば、Inferentia2はMetaのLlama 3モデルの推論実行時において、A100と比較して推論コストが40%以上低いという。

編集後記:必然的に不均衡な競争

Amazonのこの動きは間違いなく賢明だ——自社開発チップをコストセンターから利益センターへと転換しつつ、NVIDIAに対する交渉力を高める。しかしNVIDIAも侮れない相手だ。同社は次世代GPUおよびネットワークソリューションの投入を加速させており、Dell・HPなどのサーバーメーカーと連携してエンタープライズ市場での地位を固めている。

現状、AWSの外部向けチップ販売はソフトウェアスタックやエコシステムの互換性といった現実的な課題に直面している。NVIDIAのCUDAエコシステムは10年以上の積み重ねによって数百万人の開発者を擁している。AWSは独自のチップ開発フレームワーク(AWS Neuronなど)を投入しているものの、普及度はまだ低い。また、データセンター顧客は安定性や運用サポートに対する要求が極めて高く、AWSは独立した営業・サービスチームの構築が必要になる。

Amazonが超大規模データセンター(Microsoft、Google、Metaなど)に自社チップの採用を説得できれば、それは真の転換点となるだろう。しかしこれらの顧客自身もチップを自社開発している(MicrosoftのMaia、GoogleのTPUなど)ため、AWSのターゲットは中規模クラウドサービス事業者やAIスタートアップにより集中する可能性が高い。

いずれにせよ、Amazonの参入はAIチップ市場における競争を加速させ、価格の低下と技術革新を促進するだろう。NVIDIAはプレッシャーを感じるかもしれないが、短期的にはその覇者としての地位は揺るぎない。今後3年間で、AIチップ市場はNVIDIA、Amazon、そしてGoogle・Microsoftなどが並立する多極化した構図が形成されるだろう。

本記事はTechCrunchより翻訳・編集しました