2026年8月28日、テンセント混元チームは次世代フラッグシップ大規模言語モデルHy4 Previewを正式発表し、オープンソースとして公開した。同モデルはMoEアーキテクチャを採用し、総パラメータ数770B(7700億)、1トークンあたりの活性化パラメータは49B、コンテキストウィンドウは100万トークンを突破する。コード・ソフトウェアエンジニアリング分野では、Hy4 PreviewはTerminal Bench 2.1コマンドラインプログラミングベンチマークで85.4点を獲得し、DeepSeek V4 Proを上回り、Claude Opus 5と同等の水準に達した。また、実際のソフトウェアエンジニアリングタスクに焦点を当てたDeepSWEベンチマークでは、前世代Hy3の28.0から64.3へと大幅に向上した。これは、テンセント混元が2026年2月にインフラを再構築して以来、平均約2ヶ月に1回のメジャーバージョンアップという反復ペースにおける第三のマイルストーンとなる。
パラメータ倍増の背後にあるアーキテクチャ上のトレードオフ
770Bという規模は、前世代Hy3の295Bから総パラメータ数で2.6倍の増加を意味し、活性化パラメータも28Bから49Bへと倍増した。しかし、エンジニアリング上のトレードオフを真に示すのは絶対的な規模ではなく、活性化の割合にある。770B中、1回の推論で使用されるのは49Bのみであり、活性化率は約6.4%となる。これはMoEのスパース活性化の核心的なロジック——大量の「休眠」エキスパートを用いることで、1回の推論あたりの演算コストを合理的な範囲に抑える——を体現するものだ。
このモデル自体は、テンセント独自のトレーニング・推論システムの最適化にも活用されている。テンセントの公式発表によれば、Hy4 Previewはトレーニング手法、データ戦略、評価フレームワークの自動化最適化に活用され、エンドツーエンドの推論スループットをベースラインと比べて31.8%向上させたとしている。「モデルがシステムを最適化し、システムがモデルを訓練する」というクローズドループは、今回の発表において技術的な完成度が最も高い部分のひとつだが、31.8%という数値はテンセント内部の測定によるものであり、第三者による再現データはまだ存在しない。
トレーニングデータの構築戦略は、ソフトウェアエンジニアリング、ゲーム、金融、セキュリティなどの分野におけるテンセント内部の専門家が共同で策定し、WorkBuddy等のプロダクトとの密接な共同設計を通じて継続的に調整されている。「プロダクトがモデルにフィードバックする」というこの戦略は、テンセントが有する膨大な実業務シナリオという資産を活用する手段となっている。
12項目のベンチマークが描く全体像
Terminal Bench 2.1の85.4点とDeepSWEの64.3点だけを見ると、選択的な楽観論に陥りやすい。テンセントが公表した12項目のベンチマークをまとめて観察すると、より完全な全体像が浮かび上がる。explainx.aiの整理によれば、Hy4 PreviewはSWE-Bench Proで65.7点、MCPAtlasのツール呼び出し評価で83.7点、GPQA Diamondの学術的推論で92.3点、Toolathlon-Verifiedのツール呼び出しマラソンで74.1点を記録している(テンセント科技の報道によれば、Qwen 3.8 MaxおよびGPT-5.6 Solを上回った)。エージェントの一発成功率を測るAPEX-Agents(pass@1)では、Hy4 Previewは37.1点で、Kimi K3の37.2点に次ぐ2位となった。
この成績表の注目点は「明らかな弱点がない」ことだ——テンセント公式は、同モデルは12項目のベンチマークいずれにおいても最下位にはなっておらず、パラメータ規模が一部の上位競合製品を大きく下回るにもかかわらず、その水準を維持していると述べている。ただし、この「バランス型」という特徴自体もひとつのシグナルだ。Hy4 Previewは、ある特定の方向での極限的な突破者というより、「万能型の実用的プレイヤー」に近い存在と言える。
テンセントはさらに内部ブラインドテストも実施している。163名の内部専門家が203件のWorkBuddy エンジニアリングタスクに対するモデルの出力を4段階で評価したところ、Hy4 Previewの平均スコアは2.99となり、Kimi K3の2.94およびGLM-5.3(Zhipu)の2.92をわずかに上回った。explainx.aiの分析によれば、0.05点のリードは統計的には誤差の範囲に近く、3つのモデルは同種の生産性タスクにおける性能差が「互換可能」なレベルに収束しつつある。
既知の弱点:視覚入力の非対応と応答速度の遅さ
テンセント混元チームは発表時点で2つの既知の欠点を自ら公表した。第一に、Hy4 Previewは現時点で視覚入力に対応しておらず、マルチモーダル機能が欠如しているため、後続の正式版での補完を待つ必要がある。第二の点は実際のユーザーにとってより注意すべき問題だ。複雑なタスクにおいて「過剰な自己検証の傾向」が見られる——つまり、タスク実行中に直接出力するのではなく繰り返し検証を行うため、全体的な応答時間が著しく長くなる。テンセント科技の実測レポートによれば、「結果が出そうになっても、モデルが繰り返し検証を行い、ユーザーに長い待ち時間をもたらす」という状況が確認されている。explainx.aiがOpenRouterの実測データをもとに記録した情報では、P50レイテンシで推論速度は約36トークン/秒、最初の出力開始まで3.19秒を要する。
これら2つの問題は性質が異なる。視覚入力の非対応は機能の欠如であり、公式はすでに正式版での補完を明言している。しかし過剰な自己検証は推論の挙動に関わる問題であり、テンセントはこれを「プレビュー版における既知の問題」と位置づけ、ポストトレーニング段階にまだ改善の余地があるためとしている。大量の並列呼び出しや応答レイテンシに敏感な企業向けシナリオにとっては、実際の負荷テストで定量化する必要があるリスク要因だ。
価格設定とオープン戦略が示す二重のシグナル
Hy4 Previewの価格設定は、混元の「利便性重視」路線を踏襲している。テンセント混元チームが公表した料金によれば、API呼び出し費用は入力6元/100万トークン、出力18元/100万トークン、キャッシュヒット時0.3元/100万トークンとなっている。米ドル換算では、OpenRouterの掲載価格は入力$0.834/100万トークン、出力$2.501/100万トークンだ。
オープンソースの公開範囲はHuggingFace、ModelScope、GitCodeの3プラットフォームに及び、ウェイトは完全公開されている。APIアクセスチャネルにはテンセントクラウドのTokenHubとOpenRouterが含まれ、WorkBuddy と CodeBuddy では2週間の無料試用期間が提供される。同時に、前世代Hy3の上記プラットフォームでの無料アクセス期間が9月30日まで延長された——この措置は、開発者に新旧バージョンを並行してテストする時間的余裕を与えるものであり、またテンセントがHy4 Previewの「プレビューとしての立場」を自ら明示しているとも読み取れる。現バージョンは最終形態ではなく、急いで切り替える必要はないというメッセージだ。
テンセントの今四半期の研究開発費は前年同期比35%増の273億元(約41億ドル)、設備投資は同176%増の528億元(約79億ドル)に達した。これら2つの数値はfinance.biggo.comが引用したテンセントの四半期決算データに基づくものであり、Hy4 Previewに投じられた計算リソースの財務的背景を示している——特に設備投資がほぼ倍増という伸びは、大規模なGPUインフラの拡充を指し示すものだ。
競争構図:三強鼎立の構造が初期段階で形成
コードとエージェント能力の次元において、Hy4 Previewの登場により、国内オープンソースモデルの競争構図は「DeepSeekの一人勝ち」から、複数の主体が接近する段階へと移行した。Terminal Bench 2.1での85.4点がClaude Opus 5と並び、DeepSeek V4 Proを上回ったという数字の意義は、精確な順位にあるのではない。国産モデルがこのコード能力の核心ベンチマークで初めて国際的な第一梯団の水準に達したことを示している点にある。
企業ユーザーにとって、現在の競争構図が提供する選択の論理は次のように整理できる。DeepSeek V4 Proは推論速度と一部の汎用タスクで依然として競争力を持つ。Kimi K3はツール呼び出し(Toolathlon)とエージェントの一発成功率においてHy4 Previewとの差がほぼない。Zhipuの GLM-5.3は内部ブラインドテストでHy4 Previewとわずか0.07点差だった。3つのモデルは純粋なテキスト生産性タスクにおいて「性能の天井」に近づきつつあり、差異は推論速度、デプロイコスト、エコシステム統合の3つの次元へとシフトしている。
開発者向けの選定アドバイスとしては以下の通りだ。現在のプロジェクトがコード生成やコマンドラインタスクを多用する場合、Hy4 PreviewのTerminal BenchとDeepSWEのスコアは重点的にテストする価値があるが、実際の負荷条件下で過剰検証問題がもたらすレイテンシへの影響を必ず評価すること。プロジェクトがマルチモーダル入力を必要とする場合、現バージョンは利用不可であり、正式版を待つか他のモデルを選択する必要がある。コスト重視の場合、6元/100万入力トークンという価格は同等パラメータ規模の中で競争力があるが、(過剰検証の影響を受けた)実際のタスク完了に消費されるトークン量と合わせて実コストを計算する必要がある。
© 2026 Winzheng.com 赢政天下 | 转载请注明来源并附原文链接