太陽を遮る地球工学のウォーゲーム、結末は予想以上に悲惨だった

太陽を遮る地球工学のウォーゲーム、結末は予想以上に悲惨だった

Ars Technicaの報道によると、太陽地球工学(Solar Geoengineering)をテーマにしたウォーゲームが不安を呼ぶ結論を導き出した。各国が「太陽を暗くする」ことをめぐる利益争いを展開する中、地政学的介入によって局面は予想をはるかに上回る最悪な状況へと発展するという。

太陽地球工学とは何か?

太陽地球工学、別名「太陽放射管理(SRM)」とは、太陽光の一部を反射させることで地球表面の温度を下げることを目指す技術的アプローチの総称である。中でも最も注目されているのが「成層圏エアロゾル注入(SAI)」だ。これは火山噴火の効果を模倣し、硫酸塩エアロゾルを成層圏に放出することで、地球の太陽放射に対する反射能力を高めるものである。

この概念は決して目新しいものではない。1991年のフィリピン・ピナトゥボ火山噴火後、科学者たちはその後1年以上にわたって世界の平均気温が約0.5℃低下したことを観測している。しかし、この自然現象を人為的に制御可能なグローバル冷却手段へと転換するには、技術そのものをはるかに超えた科学的・倫理的・地政学的問題が伴う。

ウォーゲーム:科学実験が権力争いへと変貌する

このウォーゲームの中心的な発見は、太陽地球工学が理論から現実へと移行した途端、各国間の駆け引きが科学的協力の範囲をたちまち超えてしまうという点だ。演習に参加した専門家たちは、最善のシナリオ設計のもとでさえ、展開主体・展開規模・監視メカニズム・撤退戦略をめぐる対立が瞬く間に地政学的対抗へと発展することを見出した。

「一方的に地球全体の気候を変えられるとなれば、『主権』という言葉の意味は根本から変わってしまう。」

演習で浮き彫りになった重要な問題は次の通りだ。誰が展開を決定するのか。各国が協定を遵守しているかをどう検証するのか。ある国が一方的に展開を実施した場合、他国はどう反応するのか。そして展開が政治的・経済的理由で突然中断された場合、「ターミネーションショック(Termination Shock)」によって世界の気温が急激に反発し、壊滅的な結果をもたらす可能性がある。

予想以上に悲惨な結末

Ars Technicaの報道によれば、演習の結果は参加者の予想をはるかに超えた最悪のものだった。シミュレーションの中で、各国は有効な国際協力の枠組みを構築できなかったばかりか、「展開競争」と相互非難の悪循環に瞬く間に陥った。一部の国は他国の展開行為を敵対的行動とみなし、軍事的手段による阻止さえ検討した。

こうした事態は決して誇張ではない。現実世界では、気候変動をめぐる国際交渉すでに難航しており、太陽地球工学に伴う利益配分とリスク負担の問題はさらに複雑になる一方だ。途上国は先進国の一方的な展開が世界の降水パターンを変え、もともと脆弱な農業システムに影響を与えることを懸念するだろう。一方の先進国は、ガバナンスの枠組みが欠如したまま「フリーライダー」問題が解決不能になることを恐れる。

業界の背景とガバナンスのジレンマ

現在、太陽地球工学に関して法的拘束力を持つ国際的ガバナンス枠組みは存在しない。「環境改変技術の軍事的使用その他の敵対的使用の禁止条約(ENMOD)」は環境改変技術の軍事目的使用を禁じているが、平和目的での展開については明確な規定を欠いている。2024年、国連環境計画(UNEP)が太陽地球工学の国際ガバナンス機制の構築を呼びかけたが、進展は遅々としている。

その一方で、一部の民間企業や研究機関が関連技術の研究を進めている。2023年には、あるスタートアップが小規模な高高度気球放出実験を実施し、科学界で広範な論争を引き起こした。批判者たちは、ガバナンスの枠組みが整わないまま技術実験を推進することは「見切り発車」に等しく、取り返しのつかない政治的・生態学的結果をもたらしかねないと主張する。

編集後記:技術は万能薬ではない

このウォーゲームが示す最も重要な教訓は、おそらく技術そのものではなく、人類のガバナンス能力の限界にある。太陽地球工学は気候危機への「最後の手段」とみなされているが、この手段を公平かつ安全に活用する方法についてすら合意に達せないのであれば、それがもたらすリスクは便益をはるかに上回るかもしれない。

演習に参加した専門家が述べたように、真の問題は「太陽を暗くできるかどうか」ではなく、「太陽を暗くする前に、地球上での共存の方法を学べるかどうか」なのだ。

本稿はArs Technicaより編訳