テック業界の重鎮2人——LinkedInの共同創設者Reid Hoffmanと、ソーシャルゲーム企業Zynga創設者Mark Pincus——が共同設立した新AIラボ「Prentis」が、投資家との間で最大1億ドルの資金調達交渉を進めている。複数の事情に通じた関係者によると、この資金はコア技術の研究開発と商業化を加速するために使われる予定だという。同ラボのユニークな賭けは、「日常的なコンピュータ作業の自動化がまもなく従来のコーディングを超え、AIの最も価値あるユースケースになる」というものだ。
Prentisのコア理念:「コード自動化」から「タスク自動化」へ
現在多くのAIスタートアップがコード生成に注力しているのとは異なり、Prentisはより広範な日常的コンピュータ操作の自動化に目を向けている。GitHub CopilotやOpenAIのGPTシリーズがプログラミングのあり方を塗り替えているとすれば、Prentisが再定義しようとしているのは、ホワイトカラーがパソコンの前でこなす業務フロー全体だ。データ入力、ファイル整理、レポート作成、複数アプリをまたいだ操作といった反復作業が対象となる。同ラボは、将来のAIの第一の価値はプログラマーがより多くのコードを書く手助けをすることではなく、非技術系ユーザーがプログラミング不要で煩雑なデジタル業務を自動化できるようにすることにあると考えている。
「私たちは今まさに転換点に立っている。日常的なコンピュータ作業の自動化こそがAIの最大のユースケースとなり、そのマーケット規模はコーディング支援を大きく凌駕するだろう。」——Prentis内部技術白書(抜粋)
創業者の「ドリームコンビ」
Reid Hoffmanはシリコンバレーで最もよく知られるエンジェル投資家の一人で、LinkedInを共同創設したほか、PayPalやFacebookなど複数の企業の初期段階で重要な役割を果たした。Mark Pincusはソーシャルゲームの先駆者で、彼が設立したZyngaは「FarmVille」などのゲームで世界的な人気を博した。2人はソーシャル・モバイルの波において既にその先見性を証明済みであり、今回のAI分野への共同参入は、「人間とコンピュータの相互作用」というマクロ視点から革新的なプロダクトをもたらすことへの市場の期待を高めている。
注目すべきは、PrentisがHoffmanにとってAI分野への初の参入ではないという点だ。彼は以前、Inflection AIを共同設立してチャットボット「Pi」をリリースしており、同サービスは2023年にMicrosoftやNVIDIAなど大手企業からの投資を獲得している。ただし、Prentisはより現実的な路線を選んだようだ。汎用人工知能(AGI)を追い求めるのではなく、企業のホワイトカラーや一般ユーザー向けの「自動化ブレイン」の構築に特化している。
業界背景:自動化レースが第二次爆発期を迎える
実のところ、「デスクトップ自動化」は新しい概念ではない。2000年代初頭にはすでに、マクロやスクリプトツール(AutoHotkeyなど)によって技術系ユーザーが操作を一括処理できていた。その後、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)が2010年代に台頭し、金融や保険などの業界でコスト削減・効率化の切り札となった。しかしこれらのツールは通常、専門家によるルール記述が必要であり、GUIの変化への適応も難しかった。2020年代に入ると、大規模言語モデル(LLM)の登場によりAIが自然言語の指示を理解できるようになり、自動化のハードルが大幅に下がった。
現在、Microsoft CopilotやGoogle DuetといったプロダクトがすでにOfficeスイートにAIを組み込んでおり、AdeptやCognosysなどの新興企業もブラウザやアプリケーションを操作する「AIエージェント」の構築を試みている。Prentisの切り込み口は、特定のプラットフォームへの依存を避け、より低レイヤーでオープンな自動化フレームワークを提供することだ。
編集後記:CopilotからPrentisへ、AI軍拡競争は「ソフトウェア操作権」に移行
Prentisのビジョンが実現すれば、将来「コードを書く」ことはもはやプログラマーの専売特許ではなくなる——いや、AIにとっても最重要スキルでなくなるかもしれない。想像してほしい。自然言語でタスクを記述するだけでよい。「毎朝8時にメールボックスから最新の売上レポートを取り出し、Excelで開いて成長率を計算し、Slackに通知を送る」——AIエージェントがそのすべてを直接実行し、あなたはキーボードに触れる必要がない。これはAIの競争軸が「テキスト/コードの生成」から「オペレーティングシステムを操る能力」へと移行することを意味する。
しかしリスクも存在する。セキュリティと制御可能性が最大の課題だ。AIにコンピュータの操作を許可することは、すべてのファイルとアプリケーションへのアクセス権を付与することに等しい。悪意あるプロンプトやモデルのエラーが発生した場合、その結果は深刻なものになりかねない。Prentisは使いやすさと境界制御の間でバランスを取る必要がある。また、MicrosoftやGoogleといった巨人がすでにOS層で積極的に布陣を敷いており、スタートアップがこの競争を勝ち抜けるかどうかは依然として不透明だ。
いずれにせよ、HoffmanとPincusの後ろ盾はPrentisの資金調達において先行優位をもたらしている。1億ドルは新しいラボにとって巨大なリソースだが、より重要なのは、トップクラスのエンジニアリング人材を惹きつけ、市場を驚かせるプロダクトをリリースできるかどうかだ。
本稿はTechCrunchをもとに編集・翻訳したものです。
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