OpenAIの脅威インテリジェンスチームは2025年6月11日、二件の独立したネットワーク活動クラスターを公表した。これらは中国との関連があるとされ、ChatGPTを使って米国のAIデータセンター建設に対するネガティブなコンテンツを生成していた。目的は、電気料金の上昇や関税政策への公衆の反対意見を増幅させることだった。
活動がAIツールを利用してコンテンツを生成した手法
最初の活動グループは「データセンター便乗者」と名付けられた。操作者はChatGPTにプロンプトを入力し、データセンターの拡張が米国住民の電気料金を押し上げているとする画像やソーシャルメディアのコメントを作成させた。もう一つの活動グループは関税問題に焦点を当て、関税は米中両国が世界の技術覇権を争うための隠れた手段だとするコンテンツを生成した。プロンプトでは、米国のトランプ前大統領の画像のみを使用し、中国の習近平国家主席は除外するよう特に指示されていた。
これらのプロンプトはすべて簡体字中国語で書かれており、英語版と中国語版の両方を出力するよう求めていた。操作者はVPNを使って中国のネットワーク規制を回避し、XやYouTubeなどのプラットフォームで米国人として偽装してコンテンツを投稿した。OpenAIの追跡調査により、最初の活動グループの発信源は、複数の中国地方政府と契約実績を持つ、名前を伏せられた中国テクノロジー企業に行き着くことが判明した。
コンテンツ生成における技術的制約と痕跡
AIモデルは画像やテキストを迅速に大量生成できるものの、生成結果には明らかな欠陥が頻繁に見られた。一部の画像は構図が不自然で、テキストには直接的な宣伝口調があり、英語ネイティブスピーカー特有の自然な表現習慣が欠如していた。こうした特徴が、OpenAIが活動の発信源を特定する上での重要な手がかりとなった。
一方、操作者は単一のモデルに完全に依存していたわけではなかった。プラットフォームによる検出リスクを下げるため、人手による編集と複数回のプロンプト反復を組み合わせていた。しかしこの組み合わせ手法でも、追跡可能な言語パターンとタイムスタンプの規則性が残されていた。
拡散効果の実際の評価
OpenAIはBookmarks breakout scaleを用いて二件の活動をそれぞれ1点と2点と評価した。この評価は、活動が単一または複数のプラットフォームに出現したにとどまり、ターゲットとなる受け手から有意義なエンゲージメントは観察されなかったことを示している。研究者らは、この種の影響工作は既存の国内論争に便乗して自らの可視性を高める傾向があるが、今回のケースではその効果には至らなかったと指摘した。
報告書の著者であるBen Nimmoは、これは外国の影響工作が国内の議題を利用して世論操作を試みた典型的なケースだと指摘した。工作者は米国人になりすますことで、AIインフラに対するネガティブな世論を形成しようとしたとされる。
国家安全保障と証拠の十分性をめぐる公開論争
事件が公表されると、議論はすぐに二極化した。一方は、AIツールを活用したこの種の世論干渉は米国の重要インフラ建設に対する直接的な脅威を構成するとして、サプライチェーン審査やデータセンターの立地選定において、より厳格な外国影響評価を導入すべきだと主張した。他方は、現在の証拠はプラットフォームの行動パターンと言語的特徴に基づくものに過ぎず、中国政府への直接帰属を示す文書や指令が欠如しており、地政学的な物語の誇張という可能性を排除しがたいと指摘した。
双方ともAIツールが大規模なコンテンツ生産に利用されたという事実は否定していないものの、「影響が実質的な公衆圧力に転化したかどうか」については明確な意見の相違がある。OpenAI自身が米国内でデータセンター建設に向けて数億ドルの調達を計画していることから、同社の報告書の立場についても一部のオブザーバーから疑問の声が上がっている。
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