AIの水消費問題はどれほど深刻か?立地選定と冷却技術が鍵を握る

AIの水消費問題はどれほど深刻か?立地選定と冷却技術が鍵を握る

人工知能によるあらゆる会話や画像生成の裏には、データセンターの存在がある。データセンターは電力だけでなく、大量の水も消費する。生成AIの大規模普及が進む中、そのウォーターフットプリントへの関心が高まっている。カリフォルニア大学リバーサイド校の研究によると、OpenAIがGPT-3を学習させる際に直接消費した水は約70万リットルに上り、GPT-4の学習に要した水量はその数十倍に達する可能性があるという。さらに懸念されるのは、これらのモデルが世界規模で展開され推論を継続した場合、年間の水消費量が中規模都市の需要に匹敵しうる点だ。

ただし、「AI」と「膨大な水消費」を単純に結びつけるのは、やや短絡的かもしれない。最新の業界分析が指摘するように、データセンターの水消費量は、立地する地域の気候条件と冷却技術に大きく左右される。高温乾燥地帯では蒸発冷却システムに多量の補給水が必要となる一方、温帯や水資源の豊富な地域では、空冷や閉ループ水冷システムを採用することで実際の水消費量を大幅に抑えることができる。

水はどこに使われているのか?

データセンターの水使用は主に二つの用途に分けられる。一つはサーバーの冷却、もう一つは発電プロセスである。従来の空冷システムは直接水を消費しないが、効率に限界がある。一方、蒸発冷却塔は水の蒸発によって熱を除去するため効率が高いが、大量の水が大気中に放出される。また一般的な方式として、循環冷却水でサーバーを冷却する水冷システムがあるが、循環水の補充・更新にも相当量の水を消費する。

米国を例に挙げると、バージニア州北部は世界で最もデータセンターが密集する地域だが、気候が比較的温暖なため、多くの施設が高効率冷却塔と自然冷却を組み合わせた方式を採用しており、単位演算量あたりの水消費量は高温地域を下回る。一方、アリゾナ州やテキサス州など米国南西部では、データセンターの拡大がもともと逼迫している水資源をめぐって地域住民と競合する形となり、地域からの反発を招いている。

AIの立地選定が抱えるジレンマ

テック大手各社もこの問題を認識していないわけではない。Microsoft、Google、Amazonはいずれも、数年以内に「水ポジティブ」を実現する——すなわち、消費量を上回る水を補填する——と約束している。しかし現実の立地選定では、土地コスト・電力供給・ネットワークインフラが優先され、水資源は後回しになることが多い。典型的な事例として、Googleがチリで計画したデータセンタープロジェクトが挙げられる。首都サンティアゴ近郊への建設が予定されていたが、地下帯水層への影響が懸念されて抗議を受け、最終的に計画の再評価を余儀なくされた。

「AIのウォーターフットプリントは固定された数値ではなく、選択の問題だ。データセンターを砂漠に建てることも、雨の多い北欧に建てることもできる。」——あるデータセンター持続可能性コンサルタントの言葉

編集部の考察:より透明性の高い報告基準が必要

現在、主要クラウドサービス事業者が公表している環境報告書では、水資源消費に関する詳細な基準が統一されておらず、外部の研究者は推計モデルに頼らざるを得ない。一部の企業は「取水量」と「消費水量」を混同して使用しており、一般市民が実際の影響を正確に評価することを困難にしている。今後は、統一された地域別のウォーターフットプリント報告基準を整備し、水資源をAIの持続可能性評価における中核指標に位置づけることが、単にAIを批判するよりも実効性の高いアプローチとなるだろう。

一方で、革新的な冷却技術の実用化も着実に進んでいる。例えば、液浸冷却技術はサーバーを絶縁液体に直接浸漬することで蒸発損失を大幅に削減できる。再生水や海水を用いた冷却方式の検討も進んでいる。これらの技術が大規模に普及すれば、AIの水消費問題は大きく緩和されるだろう。

総じて言えば、AIがもたらす水資源への課題は現実のものだが、解決不可能ではない。鍵となるのは、データセンターの立地選定における水リスクの慎重な評価と、冷却技術の適切な選択だ。そしてユーザーとしても、AIへのリクエスト一つひとつの背後にある水資源コストを、ともに意識していく価値があるだろう。

本記事はArs Technicaより編訳